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ナーシングホームはこれからも地域医療に必要な存在だと考えます!

訪問看護の包括化、住宅型有料老人ホームの規制強化。その先にある地域医療のかたちについて

· 医療介護

いま、いわゆる「ナーシングホーム」を取り巻く制度が、大きく変わろうとしています。

住宅型有料老人ホームに訪問看護ステーションなどを併設し、医療依存度の高い高齢者を受け入れるナーシングホームは、この数年で全国に広がってきました。

一方、一部では、入居者を関連する訪問看護・訪問介護事業所に「囲い込み」、必要性を超えた頻回なサービスを提供することで医療・介護報酬を得るといった問題も指摘されています。

実際、厚生労働省の議論では、訪問看護ステーション全体の1人当たり月間請求額が平均11万円余りであるのに対し、請求額上位100事業所では平均62万円余りに達していることなどが示されました。

こうした問題に対して規制を強化することは当然です。

しかし、ここで考えなければならないのは、

「問題のあるナーシングホームが存在する」ことと、「ナーシングホームそのものが不要である」ことは、まったく別の話だということです。

全国で約95万人を受け入れる「高齢者の住まい」

現在、有料老人ホームは全国で約2万5千施設、定員は約95万人。そのうち住宅型有料老人ホームだけでも約2万施設、約63万人の受け皿となっています。

そして今後、日本では病院だけで高齢者医療を支えることはさらに難しくなります。

国が進める新たな地域医療構想では、病床機能の分化・連携だけでなく、外来・在宅医療・介護まで含めて2040年の医療提供体制を構築する方向が明確になっています。全国の在宅患者数は2040年以降にピークを迎える見込みで、厚労省の推計では2020年から2040年にかけて、75歳以上の訪問診療需要は約43%、85歳以上では約62%増加するとされています。

つまり、

「病院から地域へ」「入院から在宅・居住系サービスへ」という流れそのものは、これからさらに大きくなる

ということです。

そのとき、自宅での療養が難しく、しかし長期入院を続ける必要まではない高齢者を、誰が受け止めるのでしょうか。

その一つの答えが、医療・看護・介護に対応できるナーシングホームだと考えています。

2026年、訪問看護にも「包括」という考え方が入った

2026年度診療報酬改定では、高齢者住まい等に併設・隣接する訪問看護ステーションが、一定の重症患者等に頻回の訪問看護を行う場合について、新たに**「包括型訪問看護療養費」**が導入されました。

従来のように訪問回数を積み上げるだけではなく、一定の場合には1日当たりの訪問時間と同一建物の利用者数に応じて包括的に評価する仕組みです。

これは非常に大きな変化です。

今後求められるのは、

「何回訪問したか」ではなく、「その人に必要な看護を、どのような体制で提供したか」

という医療の質です。

適正に運営する事業者にとっては、むしろ歓迎すべき方向ではないでしょうか。

ナーシングホームが、「訪問看護をたくさん入れることで成立する施設」から、24時間の医療・看護体制そのものに価値を持つ施設へ変わっていく転換点だと考えています。

住宅型有料老人ホームにも「登録制」が導入される

住宅型有料老人ホームの制度も変わります。

2026年6月に公布された改正法では、中重度の要介護者など、特に入居者保護の必要性が高い方を対象とする有料老人ホームについて、現在の届出よりも厳格な登録制を導入することになりました。

登録は5年ごとの更新制となり、人員・運営基準、利用者保護、ケアマネジメントの独立性、特定の介護サービス事業者の利用を入居条件とすることの禁止など、いわゆる「囲い込み」を防ぐ仕組みも強化されます。

これは、ナーシングホームをなくすための改正ではありません。

むしろ、

「医療・介護が必要な高齢者を受け入れる住まいを、社会インフラとしてきちんと位置付け直す」

ための制度改正と見ることもできます。

質の低い事業者には厳しくなる。

一方で、医療・看護・介護を適正に提供する事業者にとっては、社会的な役割がさらに明確になっていくはずです。

そして、ナーシングホームに欠かせない「訪問診療」

私がもう一つ重要だと考えているのが、訪問診療です。

ナーシングホームに建物があり、介護職員がいて、24時間対応の訪問看護ステーションがあったとしても、それだけで医療は完結しません。

看護師が医療的な処置を行うにも、薬を調整するにも、その根底には医師による診断と指示があります。

つまり、

医師―訪問看護―薬局―介護―住まい

が一つのチームとして機能して、初めて地域で高齢者を支えることができます。

地方では、この最後のピースとなる「在宅医療を担う医師」をどう確保するかが大きな課題です。

四国でも地域差があります。例えば愛媛県では、人口10万人当たりの訪問診療実施医療機関数が宇摩圏域20.8、新居浜・西条圏域20.1に対し、八幡浜・大洲圏域37.2、宇和島圏域33.5と、地域によって提供体制に大きな差があります。単純に「都市部にはあり地方にはない」という構図ではありませんが、住んでいる地域によって在宅医療へのアクセスに差があることは大きな課題です。

香川県でも、訪問診療件数そのものは全国平均を上回る一方、要支援・要介護認定者に占める訪問看護利用者の割合は5.8%で、全国平均10.1%を下回るとのデータがあります。医師、看護、介護を「点」ではなく「面」でつなぐ余地はまだ大きいと言えます。

オンライン診療が、地方の在宅医療を変える可能性

ここに新しい可能性があります。

2026年4月から、オンライン診療は改正医療法の中で明確に位置付けられ、「オンライン診療受診施設」という新たな仕組みもスタートしました。

さらに2026年度診療報酬改定では、医師が遠隔から診察し、患者のそばに看護師がいる**「D to P with N」**についても評価が拡充されました。

新設された「訪問看護遠隔診療補助料」では、一定の要件のもと、訪問看護ステーションの看護師等が患者のもとに赴き、オンライン上の医師の診療を補助する仕組みが診療報酬上も評価されています。

これは地方にとって大きな意味があります。

すべてをオンライン診療だけで完結させることはできません。

しかし、

地域の訪問看護師 × 地域の薬局 × 遠隔の在宅医 × 必要時に対応する地域医療機関

という組み合わせができれば、これまで常勤・近隣の訪問診療医を確保できなかった地域にも、新しい在宅医療提供モデルを構築できる可能性があります。

オンライン診療は「医師を地域からなくすための仕組み」ではありません。

限られた医師という医療資源を、地域を越えて共有するための仕組みとして使うべきだと思います。

ナーシングホームを「地域包括ケアの拠点」へ

これから求められるナーシングホームは、単なる高齢者住宅でも、単なる訪問看護の提供場所でもありません。

住まいを中心として、

訪問診療
+ 訪問看護
+ 訪問薬剤
+ 介護
+ リハビリ
+ 看取り
+ オンライン医療

を地域の医療・介護事業者とつなぐ。

そんな**「地域包括ケアの拠点」**へ進化していく必要があります。

規制強化によって、従来型のビジネスモデルが通用しなくなる事業者も出てくるでしょう。

しかし、それはナーシングホーム市場が終わるということではありません。

むしろ、本当に必要な医療と介護を適正に提供できる事業者にとっては、これからが本当のスタートなのではないでしょうか。

地方には、まだ十分な医療・介護サービスが届いていない地域があります。

そこに、

「住まい」をつくる会社、
「介護」を担う会社、
「看護」を担う会社、
「診療」を担う医療法人・医師、
「薬」を届ける薬局、
そしてテクノロジーを提供する企業が集まれば、

今までになかった地域医療の仕組みをつくることができます。

病院でもない。単なる老人ホームでもない。
地域で最期まで暮らすための、新しい医療・介護インフラをつくる。

私は、そんな地方の医療・介護連携サービスを、志を同じくする皆さまと一緒に形にしていきたいと考えています。

※本稿は2026年8月時点で公表されている厚生労働省等の資料をもとに作成しています。今後、政省令・通知等により制度の詳細が変更・具体化される可能性があります。

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